こんにちは、独立系産業保健師の きむこ です。
- 「保健師が開業できるって本当?」
- 「開業のメリット・デメリットが知りたい!」
- 「実際の働き方はどうなるの?」
こんな疑問をお持ちではありませんか?
一般的に保健師は、企業や自治体に雇用されて働くイメージが強いですが、実は独立開業という選択肢もあります。
私は、企業で 15年間 産業保健師として勤務した後、現在は 独立し、企業向けに産業保健サービスを提供 しています。
最近では、保健師の新しい働き方が注目されるようになり、「独立」という選択肢を考える人も増えています。
しかし、実際にどんなメリット・デメリットがあるのか、リアルな情報はまだ少ないのが現状です。
この記事では、保健師が独立開業する際のメリット・デメリット、そして開業のリアルな実情をお伝えします。
独立に興味がある方は、ぜひ最後までご覧ください!
保健師は独立開業できるのか?
結論から言えば、保健師も独立開業できます。
企業や自治体に雇用されて働くイメージが強いですが、個人で開業し、産業保健サービスを提供する道もあります。
保健師が独立開業して働く場合は、以下のような選択肢があります。
- 企業の健康管理支援
- 健康経営コンサルティング
- 個人向け健康相談
企業や自治体、医療機関に所属せずに活動することになるため、働き方の自由度が高くなります。
「サービス提供先と雇用関係がない」という点が、組織に所属している保健師との最大の違いです。組織に所属していると業務範囲が決まっていますが、独立すると自分で提供するサービスを決められます。収益を得る手段もさまざまで、複数の企業と契約したり、オンラインで健康支援を行ったりと、自分に合った方法を選べます。
独立することで、働き方の選択肢は広がります。独立を考える場合、まずは「どのようなサービスを、どのように提供するか」を明確にすることが大切です。
保健師が開業するメリット
この記事を読んでいる保健師の方は、「もっと自由に働きたい」「自分の専門性を活かしたい」と考えているのではないでしょうか?
独立開業すると、時間の自由度が高まり、仕事の内容も自分で決められます。
独立開業にはメリット・デメリットが存在します。まずは、メリットについて詳しく解説します。
① プライベートと仕事の両立がしやすい
保健師として働いている方は、子育て中の方が多い印象です。こんな経験はありませんか?
- 子どもの急な体調不良でお迎えが必要
- 子どもは元気そうだけど、感染症のために登園できず、自分以外にみる人がいない
- 園や学校の行事があるけれど、仕事の調整が難しい
独立開業すると、雇用されて働く場合と比べて、仕事のスケジュールを柔軟に調整できます。仕事とプライベートの調整がしやすく、家庭との両立がしやすいことは独立開業の大きなメリット です。
仕事量を自分で調整できるため、家族との時間を確保しながら働くことも可能です。仕事の時間帯や休日を自由に決められるため、ワークライフバランスを整えやすくなります。企業に勤めていると、定められた就業時間の中で働くため、時間の融通が利きづらいですが、独立すれば柔軟な働き方が可能です。
ただし、自由度が高い分、自己管理が求められるため、計画的に仕事を進めることが大切です。
②自分の強みを活かして働ける
独立開業すると、ご自身の強みを活かした働き方が可能になります。 企業の健康管理、健康経営支援、個人向けの健康相談など、自分の得意分野に特化したサービスを提供できます。
組織に所属していると、与えられた業務の範囲内で働く必要があり、必ずしも自分が得意とする分野が業務となるわけではりません。しかし、独立すると提供するサービスや働き方を自分で決められるため、やりがいを感じやすくなります。
例えば、このような働き方が可能です。
- 企業向けに産業保健サービスの提供
- オンラインで健康相談
- 研修講師
- Webライターやコラム執筆
自分の知識や経験、ノウハウを活かしながら活動の幅を広げることができます。
特に研修講師や執筆活動など、組織に属していると経験しにくい仕事にも挑戦できます。
専門性を活かしながら、自分の理想の働き方を実現できるのは、独立開業ならではのメリットです。
③収入の上限がない
独立開業すると、収入の上限がなくなるのも大きなメリットです。雇用されて働く場合は、勤務先の給与体系に従うため、昇給にも限界があります。しかし、独立すると、自分の働き方や努力次第で収入を増やせます。
例えば、複数の企業と契約する、オンラインでサービスを展開して顧客範囲を広げる、研修や講演を行うなど、収益の柱を増やすことで収入を伸ばすことができます。特に、提供するサービスの単価や契約形態を自由に設定できるため、収益モデルを工夫すれば、効率よく収益を上げることもできます。
ただし、収入アップは簡単なことではありません。定期的な契約を増やす、複数の収益源を確保するなどの工夫が必要です。計画的に仕事を増やしながら、持続可能な働き方を目指すことが大切です。
④ 自分のやりたい仕事を選べる
独立開業すると、自分の価値観やライフスタイルに合った仕事を選ぶことができます。 企業に雇用されている場合、業務の内容や働く時間、職場環境は会社の方針に左右されます。しかし、独立すれば、どの仕事を受けるか、どの働き方をするかを自分で決められます。
例えば、次のような働き方を自由に選べます。
- 企業向けの仕事だけでなく、個人向けの相談にも力を入れたい
- 週に何日だけ働く、もしくは特定の時間帯だけ仕事をする
- オンライン中心で仕事をして、全国どこからでもサービスを提供する
また、自分の価値観に合わない仕事を無理に引き受けなくて済む のも独立の大きなメリットです。雇用されていると、会社の方針に従わなければならず、自分の意向と合わない仕事を担当することもあります。しかし、独立すれば、「本当にやりたい仕事だけを選ぶ」「クライアントを自分で選ぶ」 ことができるため、ストレスが軽減され、モチベーションを維持しやすくなります。
やりたい仕事を自分で選びながら、働く時間やスタイルも自由に決められる のは、独立開業ならではの魅力です。
保健師が開業するデメリット
独立開業には多くのメリットがありますが、当然ながらデメリットも存在します。
このような不安を感じていませんか?
- 収入が安定しないのでは?
- 営業は大変そう…
- すべて自己責任になるのが不安
独立開業のデメリットについても解説します。メリットだけでなく、デメリットも正しく理解したうえで、納得できる選択をしましょう。
① 収入が不安定になる
独立開業すると、毎月の収入が一定ではなくなる ため、収入の不安定さが大きな課題になります。雇用されている場合は決まった給与が振り込まれますが、独立後は 仕事の受注状況や契約内容によって収入が大きく変動します。
例えば、次のような状況が考えられます。
- 新規の契約が取れない月が続く → 収入が大きく落ち込む可能性がある
- 単発の仕事が中心で、安定した案件が少ない → 収入が不安定になりやすい
- サービス認知のための広告費がかかる → 場合によっては収支がマイナスとなる
また、開業直後は収入がゼロの期間がある可能性もあります。
そのため、開業前に以下の準備をすることが大切です。
- 生活費の備えをする → 貯蓄を確保し、無収入期間に対応できるようにする
- 固定費を見直す → 最低限の生活費でやりくりできるよう調整する
収入の不安定さをカバーするために、次のような工夫が必要です。
- 複数の収益源を持つ → 企業向けサービス・個人向け相談など収益の柱を分ける
- 定期契約を増やす → 継続的に仕事が入る仕組みを作る
- 副業を併用する → 収入が安定するまでリスクを分散する
収入の不安定さは生活に直結します。独立開業が生活を圧迫してしまっては本末転倒です。収支も含め、しっかりとした計画を立てましょう。
② 営業が必須になる
独立開業すると、自分で仕事を獲得しなければなりません。特に積極的に新規開拓を行い収入アップを目指す場合には、営業活動は必須です。企業に雇用されている場合、業務は与えられるものですが、独立後は自分のサービスを知ってもらい、契約につなげるための営業が必要です。
独立開業すると、自分で仕事を獲得しなければなりません。特に積極的に新規開拓を行い収入アップを目指す場合には、営業活動は必須です。企業に雇用されている場合、業務は与えられるものですが、独立後は自分のサービスを知ってもらい、契約につなげるための営業が必要です。
営業と聞くと、「苦手そう」「自信がない」と感じる方が多いと思います。実際、保健師として専門的な仕事をしつつ、営業も行っているという方は、雇用されている保健師ではほとんどいないのではないでしょうか。私自身、はじめは「営業って一体何をすればいいのだろう?」と思っていましたが、今では営業も迷いなく行っています。
具体的な営業方法としては、以下のようなものがあります。
- 企業への直接アプローチ(電話・メール・訪問)
→ 企業に直接連絡し、産業保健サービスの導入を提案する方法もあります。 - ウェブサイトやSNSを活用した情報発信
→ ブログやSNSで専門知識を発信し、問い合わせにつなげることができます。 - セミナーや講演での認知拡大
→ 企業向けの健康管理セミナーを開催し、信頼を得ることで、契約につながる可能性があります。
営業は慣れないうちはハードルが高いです。しかし、自分のサービスを必要としている人に届けるための手段でもあります。営業スキルを学び、実践を重ねることで、徐々に成果につながります。
③ すべて自己責任
独立開業すると、すべての決定や責任を自分で負う必要があります。企業に雇用されている場合、業務の進め方や方針は会社の指示により、最終責任は会社が負います。しかし、独立後はすべて自分で判断し、行動しなければなりません。
例えば、以下のようなことはすべて自分で決めなければなりません。
- 契約やサービスの価格設定 → 適正な価格を考え、交渉を行う必要がある
- 仕事のスケジュール管理 → すべての業務を自分で管理し、調整する
- トラブル対応やリスク管理 → クライアントとのトラブルや契約関係の問題もすべて自己対応
特に、ミスが発生した場合の責任はすべて自分にあるため、慎重に判断することが求められます。企業で働いていると、上司や同僚のサポートがありますが、独立後は自分で解決策を考えなければなりません。
すべて自己責任であるからこそ、自由に仕事ができます。しっかりとリスク管理をしながら、自分のスタイルを確立していくことが大切です。
【きむこの場合】実際の業務
私は独立開業後、企業向けに産業保健サービスを提供しています。現在、提供している主な企業向けサービスは以下の通りです。
- 定期的な保健師訪問を中心とした企業向け健康管理
→ 産業医を顧問につけ、毎月定期的に保健師が企業を訪問し、保健指導や健康相談を行います。 - メールやチャットでの問い合わせ対応を中心とした健康相談対応
→ 相談窓口として機能し、契約先従業員からの健康相談にメールやチャットで対応します。 - 研修やセミナーの講師
→ 企業の要望に合わせた健康に関するセミナーを企画・実施します。
その他、独立系産業医の先生から業務委託を受け、産業保健サービスの営業訪問を行うこともあります。
さらに、事業を運営していくためには、収益が発生しない業務も欠かせません。空いている時間には、次のような業務を行っています。
- 競合産業保健サービスの調査やサービス開発
- 経費入力や収支計算
- 営業計画やチラシなどの営業ツールの作成
- ホームページのメンテナンス
事業運営に必要な業務はアウトソーシングすることも可能です。私はまだ創業期にあたることもあり、一部をアウトソーシングすることはありますが、原則、すべて自分で業務を行っています。
【きむこの場合】収益化のタイミング
産業保健師として独立し、企業向けにサービス展開する場合、多くの方は仕事に直結する何かしらのコネクションを持った状態で独立するケースがほとんどです。
同じ職場の産業医が独立して手伝いを頼まれた、職場との雇用形態を変更する必要があり、業務委託契約に切り替えるタイミングで開業した、などです。
しかし、私はキャリアを積んできた地域と独立した地域が異なることもあり、まったくのゼロスタートでした。そのため、収益化までには時間がかかっています。
0→1が一番大変なので、前述したようなコネクションがある方は、もう少しハードルが低いと思います。
開業当初は全くあてもないため、ビジネスマッチングサービスを活用した単発の相談業務が中心でした。私はコンサル案件が豊富な「ビザスク」を利用していました。
開業後半年間はこの単発業務が収益のメインであり、月の収益は1万~3万円程度 にとどまりました。
開業半年後、企業から直接研修の依頼を受け、これが実質的な初めての大きな収益となりました。
ここに行きつくためには、まずはコネクション作りが最優先と考え、以下のような取り組みを行いました。
- 異業種交流会に積極的に参加 → 人脈を広げ、情報収集
- Twitter(現:X)で情報収集&情報発信
- 産業保健職のコミュニティに入会 → 横のつながりを強化し、産業医との協力体制を構築
この活動の結果、現在も仕事をともにする産業医の先生と出会うことができ、事業を安定させる基盤 となりました。
何が一番大変か。それは、人脈作り≒営業です。
いくら自分の提供するサービスに自信があろうと、認知してもらえなければ検討すらしてもらえません。
認知してもらった後は、「このサービスが提供相手にどのような利益をもたらすか」を明確に提示する必要があります。
おそらく、今後もこの部分が一番大変だとは思いますが、それも独立の醍醐味なのかもしれません。
現在は複数の企業と定期訪問や相談窓口業務の契約を結び、月の収入は比較的安定 しています。
独立後すぐに収益化することは不可能ではありませんが、安定した収益を得るためには、時間をかけて人脈を作り、営業を継続することが重要 だと実感しています。
まとめ
保健師の独立開業は、自由な働き方を実現できる一方で、収入の不安定さや営業の必要性など、乗り越えるべき課題もあります。
私自身、コネクションゼロからのスタートだったため、収益化までに時間がかかりました。 しかし、ビジネスマッチングサービスを活用しながら単発の仕事を積み重ね、異業種交流会やSNSを通じてコネクションを広げることで、徐々に安定した収益を得られるようになりました。
独立開業を成功させるためのポイントは以下の3つです。
- 人脈作りを最優先する
→ 企業や産業保健職とのつながりを広げることで、仕事のチャンスが増える。 - 営業を学び、実践する
→ サービスを必要としている相手に「どんな価値を提供できるか」を伝えられるようになる。 - 収益が安定するまでの計画を立てる
→ 貯蓄や副業などを活用しながら、収益基盤が整うまでの期間を乗り切る。
もし『独立に興味はあるけれど、具体的に何をすればいいかわからない』と感じているなら、まずは開業準備のステップを知ることから始めてみましょう。
独立開業は決して簡単な道ではありません。しかし、自分のペースで働き、理想のキャリアを築くことができる選択肢です。
一歩を踏み出すことで、新しい未来が開けるかもしれません。
「独立に興味はあるけれど、不安がある」という方にとって、この記事が少しでも参考になれば嬉しいです。